大阪梅田ひき逃げ事件(不作為犯にあらず)
大阪梅田駅前で発生したひき逃げ事件(先月21日未明発生)の被疑者が、本日(08年11月5日)、大阪府警に逮捕されました。防犯カメラの画像から、ひき逃げ車両のおおまかなイメージ(黒のミニバン)が分かっていたので、被疑者逮捕は時間の問題と思っていましたが、現実に被疑者検挙に至り、何よりです。
さて、今回の被疑者逮捕を受けて、とあるテレビコメンテーターが、不作為も殺人になるとのコメンを出していました。これは、おそらく「不真正不作為犯」のことを指摘したものと思われます。
不真正不作為犯とは、作為の形式で規定されている構成要件(≒刑法の条文)を、不作為の形で、実現する犯罪をいいます。そもそも構成要件が、不作為の形式で規定されている場合は、真正不作為犯となります(不退去罪、保護責任者遺棄罪、多衆不解散罪)。真正不作為犯は、構成要件自体が、不作為犯を規定しているので、何ら問題はないのですが(罪刑法定主義に反しない)、不真正不作為犯は、条文にそこまで(作為義務)まで読み込めるかという点で、罪刑法定主義に反しないかが、問題となります。
結論としては、一定の作為義務が解釈上認められる者(保障人)に限って、真正不作為犯を肯定します。例えば、煙草の火を失して、布団を燃やしてしまった者が、容易に消火できるにもかかわらず、家屋にかけた火災保険金ほしさに、あえて自宅家屋が炎上するにまかせた場合、放火罪が成立します。
そこで、今回のケースを見てみます。確かに、ひき逃げ事犯において、殺人が認められる場合もあります(判例もあり)。しかし、ひき逃げ事犯は、道路交通法にも規定がある犯罪で、犯罪学上一定型性を有するものです。従って、ひき逃げが直ちに殺人罪にあたることはありません。そもそも殺人罪は他人を殺害することですから、不真正不作為を認める場合は、作為の場合(例えばナイフで刺す)と、構成要件的に同質といえなければなりません。そうすると、単に逃走しただでは不十分で、作為の殺人と同じレベルにまで、被害者の生命を支配していたことが必要となります。具体的には、一旦自分の自動車に被害者を乗せてから(引受行為)、別の場所に放置したような場合です。
このように考えると、今回のひき逃げ事犯は、不真正不作為犯ではありません。単なる作為による殺人です。すなわち、人をはねた後、自車がその人を引きずっていることを認識し、このまま、逃走行為を続ければ、引きずられた被害者が死んしまうかも知れないことを認識、認容して、逃走行為を続けたことが、作為による殺人行為となるのです。
ところで、グーグルストリートビューにひき逃げ車両が写っていたことが、報道されています。ストリートビューの撮影をした時、たまたま車庫に駐車中だったのでしょうが、ストリートビュー恐るべしです。ラーメン店の防犯カメラも恐るべし。
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