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2010年9月 3日 (金)

遺族で何を立証するのか(押尾裁判)

 本日、9月3日が、押尾学被告人の第1回公判期日です。本件につき、殺人罪は成立困難と解されますが、保護責任者遺棄致死罪に関しても、個人的には、成立を認めることは難しいと考えます。
 そもそも、保護責任者遺棄致死罪が成立するには、保護義務が必要です。本件の場合、押尾被告人と死亡したホステスは、何ら法令条上の保護関係がないので、条理上の先行行為が保護義務の根拠と思われます。そうすると、よほどの強い支配があって、先行行為を行ったのではない限り、道徳的にはともかく、法的義務としての保護義務は発生しないと解するべきです。
 極端な例ですが、例えば、自宅の庭にホームレスが住み着いているのを、同情心から黙認していたところ、ある日、そのホームレスが突然心臓発作を起こしたとします。この場合、ホームレスを保護する法的義務はないはずです。もちろん、人道的道徳的には、苦しんでいる人がいれば、救急車を呼ぶべきと言えます。しかし、それは法的義務ではないのです。ホームレスが住み着くのを黙認したことでは、先行行為にはならないです。このホームレスを自宅に招き入れて、日常的に家事手伝いをさせていたような場合に至って初めて、先行行為に基づく法的な保護義務が生じると解すべきです。
 押尾被告人のケースは、ホステスが自ら好んで薬物を摂取した結果なのですから、押尾被告人には先行行為すらないといえます。
 判例で認められた先行行為は、女子中学生をホテルに連れ込んで、勝手に覚せい剤を注射して、錯乱状態に陥らせた場合です。この場合は、女子中学生の意思によらないで、被告人が覚せい剤注射をしたのですから、それから生じた結果については、俗な表現ではありますが、尻拭いをするべきといえます。
 このように、そもそも保護義務があるといえるか、非常に疑問です。それに加えて、押尾被告人自身は、保護義務jを果たしていたとも言えます。午後6時に発症し、午後6時47分までには死亡していたとのことですかてから、その間、47分です。薬物で異常な状態になるのは、ある程度予想されることです(というよりそうなるために薬物を摂取するのが通常です)。そうすると、最初の15分程度は、異変を感じつつも、まさか死亡するとは思わないでしょう。しかも、異変が進行して、容体が悪化したところで、心臓マッサージなどの救命措置を行ったいたとのことです。これは、保護義務をきちんと果たしたといえます。判例の事案は、異変を生じたにもかかわらず、覚せい剤利用の発覚を恐れて、そのままホテルから逃亡したケースですから、比較になりません。
 さらに発症後、47分で死亡したのですから、直ちに救急車を要請していたとしても、救命可能であったかは、極めて疑問です。そもそも救急車が到着するまでの時間、搬送先病院までの時間を考慮する必要があります。事件発生時刻は、昨年8月2日午後6時です。当日は、土曜日で、しかも場所は六本木です。土曜日の六本木の渋滞状況を考えれば、いくら救急車でも、10分以上はかかるでしょう。そこから、受け入れ先病院を決めなければなりません。。都内の救急車たらい回しは、ここで説明するまでもないでしょう。
 そうすると、仮に異変発生後すぐに、救急車を要請していたとしても、47分以上かかる可能性は十分にあります。
 この救命可能性は、保護義務の根拠ですから、裁判においては合理的疑いを超えて、検察官が立証する必要があります。判例の表現を借りるならば、「十中、八、九救命が可能であった」ことを、検察官が裁判官、裁判員に確信させなければならないのです。すでに指摘したように、発症から死亡まで、最長でもわずか47分しかないことを考えると、救命については、合理的な疑いが残ります。
 以上、ご説明した通り、そもそも法的判断として、保護責任者遺棄致死罪が成立するか、非常に疑問です。それにもかかわらず、ホステスの遺族が証人と予定されていることは、極めて問題です。もし、ホステス遺族が被害者づらをして、押尾被告人を批判するだけの証言をすれば、素人である裁判員は、感情で有罪認定をするおそれがあります。これが、人民裁判の恐ろしいところです。
 もし有罪判決が出た場合は、その理由付けの妥当性を厳しく評価する必要があります。本来、保護義務の有無は法的評価ですから、裁判員判断にはなじまないはずです。裁判員が、どのような法的思考で結論を示すのか、興味があるところです。
 保護義務に関して、私が提示した疑問点に言及し、回答出来ていないようであれば、裁判員制度は、欠陥制度ということになります。
 本日は、以上です。

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コメント

いや、保護責任者遺棄は成立すると思います。そうでなければ法律のプロである検察が立件するはずがない。保護責任者遺棄致死では成立しないでしょうが。

はなむらさま
管理人でございます。
拙いブログへの、コメント有難うございます。
本件について、保護責任者遺棄致死罪が成立するかは、見解が分かれるわかれるところですから、
各人がご自身の考えをお持ちなにるのは、
結構なことです。
ただ、理由づけが、検察が立件したから有罪というのでは、
裁判をする意味がなくなります。
あくまでも裁判所が有罪無罪を決定することになります。
また、保護責任者遺棄罪は成立するが、致死は成立しないとのご説ですが、いかなる理由によるものでしょうか、
死の結果について責任を負わないなら、
そもそも保護責任がないはずです。
なぜならば、判例でいうところの「十中、八、九救命可能であった」と言えないからです。
保護責任者遺棄にはなるが、致死の結果を負わないというのは、このようなケースです。
すなわち、救命可能にもかかわらず放置したが、無関係な第三者がナイフで刺殺したような場合です。この場合であれば、保護責任者遺棄罪の実行行為着手はありますが、死の結果についての、因果関係が切れるからです。
以上です。

投稿: はなむら | 2010年9月 3日 (金) 午前 03時38分

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